パストラル・ハープとは
パストラル・ハープの目的は?
パストラル・ハープとは、愛と安らぎに満ちた音楽によって行われる、死に移行する人への緩和ケアです。そこではハープと人の声が用いられます。
その目的は、死、すなわち人間の魂本来の世界に戻ろうとしている人の、身体的、精神的、霊的な苦痛を解放することです。
どんな状態(病気)の人を対象とするのですか?
悪性腫瘍(がん)、心臓病、呼吸器疾患、重い糖尿病、腎臓疾患(人工透析患者)、エイズ、アルツハイマーの末期、心に病をもつ人など幅広い疾患の人々を対象とします。
パストラル・ハープのの効能は?
これらの疾病の患者に対する、パストラル・ハープの実践経験では、次のような効能が明らかになってきました。
- 痛みの軽減
- 心拍数の安定
- 呼吸の安定
- 精神的な安定
また、特に注目されているのは、人間にとって最も重要なものが「愛」であるということを心の底から理解するという、人格の劇的な変化が見られる場合があることです。
痛みが大きく軽減されることで、患者さんが生きることに対して再び希望をもつ場合もあります。
どのようなことをするのですか?
その人の状態に応じて、一対一で行われる生演奏です。ハープ(これは持ち運びが可能で、音色が非常に優しいという特徴がある)と歌とを、人生の終末期(短時間の臨死期とは限らない)にある人のベッドサイドで、その患者さんの身体的、精神的、霊的な状態を感じ取りながら、リズム、緩急、強弱、音質等を柔軟に変化させて、愛と注意深いケアの姿勢で、演奏するものです。
どんな曲目が演奏されるのですか?
基本となる曲はグレゴリオ聖歌や祈祷歌、子守歌、童謡などです。選曲の特徴として、必ずしも患者さんの文化圏のこどもの歌が選ばれるわけではありません。これは、私たちが一般的に安らぎを感じる音楽であっても、その曲目が患者さんにとって辛い記憶、体験を引き出すこともあるからです。
このように人の心に、安心、安定、平安を引き出すことのできる曲目が選ばれ、これらを組み合わせて患者さんに提供します。
患者さんの状態とは、呼吸、脈拍、体温などの観察できる身体状態、睡眠、痛みなど、看護師から報告を受ける心身状態、安定や平安、恐れや悲嘆の度合いなどの心の状態など、すべてにわたります。